「ざ〜んねんでしたっ。そうそう簡単には、 負けてあげませんよ〜だっ☆」  勝利の喜びを満面に浮かべ、澄美が言う。  本当に元気で、見ていて飽きない娘だ。 (……でも、そのくせ潔癖性なんだよなぁ) 潔癖性の人間は、人付き合いも苦手な場合 が多い。接する相手に神経を使わせてしまう ため、友達ができにくくなってしまうのだ。  その結果、自然と性格も内向的になる。 だが、澄美はそうではない。  社交的で明かるい雰囲気が、彼女にはある。  矛盾を、矛盾として抱いていないのだ。 「どうして、君は汚れにこだわるの?」  例によって手を洗いながら、俺は尋ねた。  澄美は一瞬だけきょとんとした顔をすると やがて屈託なく笑った。 「やだなぁ、お客様。当然のことですよぉ」  汚れを好む人間など、いるはずがない。 「それに私は女の子なんですよ。女の子なら 身の回りを清潔にするのは当然ですって!」  君の場合は行き過ぎだよ……喉元にまで出 かかった言葉を、俺は慌てて飲み込んだ。  言えば、きっと彼女は傷つくだろう。  それは俺の望むところではない。 (とはいえ、このままじゃいけないな……)  澄美の思いこみは、正したほうがいい。 それが原因となって、彼女の明かるい性格 に影が差してしまわないためにも。